建築のこと
赤外線サーモグラフィカメラによる内外表面温度の検証と体感温度
今日も外は雨が降ったりやんだりしています。
ここ1週間ほど秋雨前線の停滞の影響で大雨続きです。
その影響で外気温も22℃~27℃程度であり8月なのに肌寒い毎日です。
この雨が降り続ける前は暑い暑い日が続いていました。
そんな日の8月5日に
強烈な西日の当たる外壁面とその室内温度
の確認をしました。
気温:気象庁発表の最高気温36.3℃(実際は38℃~39℃)
(屋内はエアコンを弱運転して室温27℃)
画像1 (外壁の熱画像)
(機器調整不足で熱画像と実際の画像位置がずれていますが表面温度位置は正しい部位の温度としています)
Sp1:「58.0℃」 西日がまともに当たる西外壁面。
Sp2:「49.6℃」 窓部分の屋外用遮熱スクリーン面。
Sp3:「35.3℃」 北外壁面。
Sp4:「33.2℃」 屋外アルミ製ブラインド面。
Sp5:「44.4℃」 アスファルト道路。
Sp1は黒色のガルバリウム鋼板外壁面のため「58.0℃」と強烈な温度です。
日中の屋根面も同じような物かもっと温度が高いでしょう。
同じ西面でもSp2は窓の外側に取り付けてある遮熱スクリーン面のためガルバとは9℃ほど温度差が有ります。
もっと温度が低いかと思いましたが、思った以上に熱を持っていますね。
日差しが直射していない北面でもSp3外壁のガルバとSp4ブラインドのアルミでは2℃の温度差があります。
熱伝導率の差が表れているようです。
Sp5の道路面は時間的にも日中の表面温度からは下がってきています。
画像2 (外壁のデジカメ画像)
画像3 (屋内側の熱画像)
Sp1:「35.0℃」 樹脂サッシ枠
Sp2:「30.6℃」 ガラス面。(アルゴンガス入りLow-Eトリプルガラス)
Sp3:「29.6℃」 西日の当たる壁面。
Sp4:「28.1℃」 天井面。
Sp5:「27.0℃」 壁面。
画像4 (屋内側のデジカメ画像)
まずは一番温度が高いのがサッシ枠Sp1:「35.0℃」です。
外側に遮熱スクリーンが設置してある効果も有り、外部が49.6℃に対しての温度差が14.6℃となります。
このサッシの熱貫流率は0.94 W/(㎡K)。
(熱貫流率は数値が小さいほど断熱性能が高い(高性能)です。)
ガラス面に至ってはSp2:「30.6℃」と外部との温度差が19.0℃となかなかの高性能です。
ガラス中央部の熱貫流率は0.63 W/(㎡K)。
(余談)
サッシの断熱性能はサッシ枠の熱貫流率Uwとガラスの熱貫流率Ugの合計値なのでガラスの性能値が格段に向上しているためサッシ性能が劣って見えます。
サッシ全体の性能を上げるためには枠の面積を小さくし、ガラスの面積を大きくしていく事が同じ部材を使用するのであればサッシ性能を上げる事になるのだろうと思います。
Sp3、Sp4、Sp5はそれぞれ日の当たる壁面と天井面と日の当たらない壁面です。
Sp5壁面(西側外壁の内面)は27.0℃なので、外壁面58.0℃との温度差は31.0℃。
強烈な差が有りますね。
外壁の熱貫流率は0.203 W/(㎡K)。
サッシを高性能な物にしても壁面の断熱性能との差は大きい。
何よりも大きいのが価格差。
窓は高価な高断熱樹脂サッシにトリプルガラスをセットしてもUw=0.94。
壁は安価なロックウールやグラスウールの付加断熱仕様でU値=0.203。
高価な割にサッシはどうしても断熱性能が劣ります。
だから、採光や換気、屋外の見える開放感などを考えながら必要な箇所に必要なサイズの窓、必要な性能値の窓を設ける計画を適切に行う事がとても大切になります。
―― 体感温度について ――
体感温度は(壁面温度+室温)/2です。
(湿度や気流の影響がない条件ではありますが。)
この日は(壁面温度27℃+室温27℃)/2=体感温度27℃であり、とても快適でした。
特に室内で動き回っているいるわけでもなくエアコンを25℃設定にしても暑いというのは壁面温度が高いのだと思われます。
((壁面温度31℃+室温24℃)/2=体感温度27℃ では風を浴びていないと暑いんです。または暑くは無いけれど不快に感じるというやつです。)
エアコンを効かせても炎天下の車中で暑いのと同じですね。
壁の断熱性能を上げれば効果が現れます。
―― 西面の窓について ――
特にメリットが無い限り西面に窓を設けないように設計をしています。
この住宅も西面にはこの画像の小さな窓1つだけです。
この日もそうでしたが、室内でこの窓の前だけ “暑い“ んです。
この窓の近くだけ確実に暑さを、熱を感じるんです。
「この窓は無くせばよかったなぁ」と思ってしまいます。
まあ理由が有って設けた窓なのでこれはこれで良いのですが、設計意図があるにもかかわらず、そう思えてしまうほど西面の窓は難儀なのです。