建築のこと
キッチン形状とレイアウトの考え方
目次
1.LDKが前提
2.対面キッチン
3.アイランドキッチン
4.ペニンシュラキッチン
5.壁付キッチン
6.I型キッチン
7.どのキッチンレイアウトが一番良いのか?
1.LDKが前提
今時の住宅の設計では住まい手さんのご要望の多くは ”LDK” の形です。
リビング・ダイニング・キッチンを分けずに一体の部屋の中にレイアウトします。
その中でも主役となりつつあるのがキッチンであり、”キッチンは道具”です。
水も使えば火も使う、よく使い、毎日汚れる。
さらに言えばとても生活感の出やすい場所です。
これらを考えるとキッチンのレイアウトはとても重要で
使い勝手や見え方も考えて計画をする必要が有ります。
(一体型のLDKとしない場合は以下の話は変わってきます。)
一般的なキッチンのレイアウトを過去に設計した建物の画像を交えて考えてみます。
2.対面キッチン
住まい手さんの一番多いご要望の形が対面キッチンです。
今までの日本の住宅で多かった壁付キッチンからすると ”新しさ” を感じられ、
TVドラマの間取りでもこの形が多い事による影響が大きいと思います。
ご希望されるイメージとして多いのは、
「壁に向かって料理をするのではなく、子供や家族の顔を見ながら料理をしたい」
「キッチンに立ちながらリビングのTVを見たい」
と言ったご要望です。
これらはご希望されるのであればメリットとも言えます。
デメリットは配膳や片付けが意外としづらく面倒である事。
この作業を2人で行う事が前提であれば全く問題は無いのですが、
ダイニングテーブルに対面カウンターを回り込んでに動く必要が有るため
1人では意外と効率が悪いのです。
3.アイランドキッチン
アイランドキッチンはモデルハウスなどのきれいな状況で見ると、とても素敵です。
憧れを口にされる住まい手さんも結構おみえです。
メリットは”カッコ良さ”でしょうか。
デメリットは、
・キッチン代金が高い
・キッチン部分の面積を広く必要とする。
・周囲の床に水はねや油汚れが広がりやすい。
この開放的なキッチンはやはり魅力的(使用前の画像だと言う事をご理解ください)
4.ペニンシュラキッチン
キッチンの短辺の片面(通常はコンロ側)が壁にくっついているレイアウト。
「3.の対面キッチン」もほとんどが同じレイアウトですが、ここでは
アイランドキッチンに使用するフルフラットキッチンを壁付けにしたものを
対象としています。
メリットとしてはスペースを広くとらないのでアイランドキッチンよりも間取りを
計画しやすい事です。
デメリットについてはアイランドキッチンとほぼ同じです。
フルフラットキッチンをペニンシュラ(半島型)にレイアウト
コンロ前だけ壁としたフラットキッチン
5.壁付けキッチン
新築の計画が10軒有っても1軒有るか無いかという少ないのが壁付けキッチンです。
有る意味 設計力が必要とされる形です。
昔のようにダイニングキッチンとリビングが別であれば何も問題は無いのですが、
LDKでこの形を計画するには見え方、使い勝手など設計者のこだわりが
強く出るレイアウトです。
キッチンのデメリットの「水も使えば火も使う、よく使い、毎日汚れる。」に対しては
前が壁なので掃除等は一番しやすくなる事がメリットです。
集中して調理が出来るので料理好きにはメリットの大きいレイアウトです。
ダイニングテーブルを料理の下ごしらえや配膳準備などに利用できる点もメリットです。
アメリカのドラマの間取りを見ていても一番多いのが合理的なこの形ですね。
壁付けとしたL型キッチン
6.I型キッチン
対面キッチンやアイランドキッチン、ペニンシュラに一列に並べてダイニングテーブルを
配置するレイアウトをI型キッチンと言った呼び方をします。
配膳、片付け、下ごしらえにダイニングテーブルを使いやすい点では対面キッチン
よりメリットが大きいと思います。
ただし、全体の間取りなどの関係で対面キッチンの方がマッチする場合もあるため、
対面でもI型でもどちらでも OKと言っていただく方が良いプランニングが出来ます。
キッチン前の造り付けカウンターで食事やデスクワークをする想定。
キッチン左側にダイニングテーブルを置く。
ダイニングテーブルを奥の壁(窓下)にくっつけて配置する
7.どのキッチンレイアウトが一番良いのか?
それぞれメリットもデメリットも有りますのでその点を十分に理解された上で
ご要望を伝えて頂ければOKです。
ただし、水はねや油の飛びは思った以上に広い範囲まで飛び散ります。
コンロ前を壁として調理の飛び跳ね防止とレンジフードの排煙効率を高める形
コンロ前に油はね防止のためにガラスの壁を設ける場合はリビング側からも
汚れが丸見えとなりますのでこまめに掃除をする事が前提になります。
毎日、使用後に掃除をするのが嫌な人は自分に向くのか向かないのか良く考えた方が良いです。
そもそもアイランドキッチンは ”毎日料理をする事を前提としたキッチンスタイルではない”
事を理解して頂く必要が有ります。
これは元々は配膳用のキッチンです。
温めたり、配膳盛り付けしたりするキッチンです。
採用したい場合は食洗機は必須だと考えます。
食洗機も国産の引き出し式の容量が小さな使い勝手の悪いものではなく、
フロントオープンの物をお勧めします。
折角格好の良いフルフラットキッチンを採用したのに、食事の度に洗った食器や
フライパンなどがキッチンの上で水切りされている姿は恰好が良いとは言いにくいです。
ダイニングテーブル以外にも忙しい朝はカウンターで済ますという生活スタイルも有ります。
漠然としたイメージだけではなく、自身のキッチンの使い方をよくイメージし、
設計者と相談すれば後悔しないキッチンになると思います。